全3回で宇宙の歴史を解説する本シリーズ。
今日は「宇宙の終わり」について考えてみたいと思います。
宇宙って無限に続いているように見えますが、実はいつか終わってしまうかもしれないんです。
科学者たちは、いろいろな方法でその未来を予測していて、いくつかの「終わり方」が考えられています。
今回は、その中でも4つの代表的なシナリオを紹介しますね。
1. ビッグリップ:宇宙がバラバラになる未来
最初に紹介するのは、「ビッグリップ」と呼ばれるシナリオです。
ビッグリップでは、宇宙がどんどん広がり続けて、最終的にはすべてのものがバラバラになってしまうと言われています。
重力による結びつきの崩壊
私たちの地球もそうですが、星は自分の重力によって形を保っています。
そして銀河も銀河団も、互いの重力によって結びついています。
一方で「ダークエネルギー」という不思議な力が働いていて、宇宙の膨張速度はどんどん早くなっており、これにより銀河同士の距離は遠くなっていきます。
また、この速度は無限大に速くなっていけることがわかっています。
この膨張速度が一定を超えたとき、星や銀河を結びつける重力よりも引きはがす力が大きくなり、すべての星や銀河がばらばらになってしまいます。
とんでもない終焉ですが、ビッグリップが訪れるのは2000億年後だそうですので、一安心ですね。

2. ビッグクランチ:縮む宇宙
次に紹介するのは、「ビッグクランチ」です。
ビッグリップとは逆で、宇宙がどんどん縮んでいく未来を描いています。
宇宙がビッグバンの余韻で膨張していると考えると、その膨張はいつか止まると考えられます。
すると、宇宙にある星々の重力によって、宇宙自体が縮んでいきます。
だんだんと宇宙のすべてが引き寄せられて、最終的にはすべてが1点に集まってしまいます。
最終的に、宇宙には超巨大なブラックホールが一つだけ存在するようになり、やがて宇宙は小さな点になります。
この説では、また新しいビッグバンが起こって、新しい宇宙が誕生する「ビッグバウンス」をくりかえす「サイクリック宇宙論」にもつながっています。
ちなみにこのシナリオは、宇宙誕生から166億年~358億年で起きると考えられています。
意外にも早く、最短であと28億年後には、この宇宙が終わりを迎えるかもしれないんですね。

3. 宇宙の熱的死:静かで冷たい終わり
三つ目のシナリオは、「宇宙の熱的死」です。
このシナリオでは、宇宙全体のエネルギーがだんだん均等に広がり、最終的には何も変化しなくなってしまいます。
このシナリオには、「エントロピー増大の法則」が関係しています。
簡単に言うと、「すべてのものは乱雑・無秩序な方向に変化し、自発的に整うことはない」という法則です。

実は、エネルギーの中でもっとも乱雑な状態が「熱エネルギー」で、例えば太陽が熱を放つことで、宇宙のエネルギーは熱エネルギーへと変化しています。
宇宙全体のエネルギーが星たちによって熱エネルギーにされてしまうと、星や銀河も動かなくなり、宇宙全体が変化せず、冷たく静まり返るんです。
宇宙にあるすべての星が燃え尽きてしまえば、新しい星も生まれなくなる。
まるで冷蔵庫の中でアイスクリームが固まってしまうように、宇宙も冷たくなって、何も動かなくなる未来が待っているかもしれません。
ちょっと寂しい未来に見えますが、これも一つの宇宙の終わり方なんです。
4. 真空崩壊:突然の終わり
最後に紹介するのは、「真空崩壊」です。
このシナリオは、これまで紹介したものとは違って、突然やってくる宇宙の終わりです。
そもそも「真空」とは
ところで、「真空」とは何でしょうか?
これには、物質のエネルギーを考える必要があります。
下の画像を見てください。
物質には「最もエネルギーが少ない状態(=true)を取りたがる性質」があります。

地球上でも、坂の上に置いたものは落ちて行って、一番低いところで止まりますよね。
これも「位置エネルギーが一番少ない状態」に落ち着いたと考えられます。
しかしこの「最もエネルギーが少ない状態」が厄介で、じつは「最小値(=true)」と「極小値(=false)」の二つがあります。
一見落ち着いているように見えるものでも、実は途中の谷にはまっているだけかもしれないのです。
そして、「最小値」を「真の真空」、「極小値」を「偽の真空」と呼びます。
また、物質はエネルギーを放出しながら、偽の真空から真の真空に移行することがあります。
これが「真空崩壊」のカギになります。
真空崩壊
「真空崩壊」に話を戻しましょう。
今まで、宇宙は真の真空と考えられていました。
しかし、最新の研究により、実は偽の真空の可能性が高まりまったのです。
先ほど説明したように、偽の真空はエネルギーを放出しながら真の真空に変化する可能性があります。
つまり、宇宙空間のある一点で、偽の真空から真の真空への変化が起きる可能性があるのです。
これが「真空崩壊」です。
一点でも「真空崩壊」が起こったら、光の速さでその変化が広がり、宇宙全体がまったく違うものになってしまう可能性があります。
この変化はあまりにも急なので、私たちは気づくこともなく宇宙が終わってしまうかもしれませんが、今はまだ仮説にすぎません。
ちなみに、この変化が起きる確率はとても低く、もし発生しても光の速度以上で広がることはないので、人類が心配する必要はほとんどありませんよ。

未来の科学が解き明かすかも?
これまで紹介した4つのシナリオ、どれもワクワクするものばかりですね!
しかし、実はどの説が本当かはまだわかっていません。
今、科学者たちが一生懸命研究していますが、宇宙の終わり方はとても複雑で、まだまだ解き明かされていないことがたくさんあるんです。
でも、未来にはもっと進んだ技術や知識を持った科学者たちが現れて、宇宙の終わり方を解明するかもしれませんね。
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